個人的な白猫プロジェクト日記

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「在外邦人救出は憲法違反」 空虚な言論もたらした新聞はもう要らない 作家・ジャーナリスト 門田隆将

 下記は、2017.5.14 付の産経ニュース【新聞に喝!】です。

                       記

 この1カ月ほど、新聞が日本にとって「不可欠なもの」ではなくなったことを見せつけられた日々は、かつてなかったのではないか。

 高齢の「新聞世代」と若年(じゃくねん)の「ネット世代」とでは、情報を取得する手段やツールがどんどん「乖離(かいり)」してきていることは今更、指摘するまでもない。

 それを踏まえながら、この1カ月−つまり、北朝鮮「4月危機」を振り返ると、日本の新聞離れは、もはや、止めようがないことを嫌でも再認識させられる。わかりやすく言えば、もう新聞は「要らない」ということである。

 これからも続く朝鮮半島危機は、長く太平の眠りを貪(むさぼ)ってきた私たち戦後日本人の意識をあざ笑うかのように深刻な事態へと進んでいる。

 平和ボケした日本人は、自衛とは、「国民の命を守ること」であるという世界の常識にすら背を向けて過ごしてきた。

 それは、朝鮮半島危機に際して、韓国にいる約3万8千人におよぶ在留邦人は、ソウルをはじめ、各都市が火の海になったとしても、自衛隊が「救出に行くことはできない」という驚くべき「現実」として、私たちに突きつけられているのである。

 日本は、目と鼻の先にいる邦人を救いに行けない。しかし、そのことすら新聞は読者の前に提示できない。いや、それどころか、そういう法整備の「壁」となってきたのが新聞だった。

 安保法制では、自衛隊法の改正によって、〈在外邦人等の保護措置〉の項目が新設され、在外邦人が危機に陥ったとき、それまでの「輸送」だけでなく、「救出・保護」を自衛隊ができるようになった。だが、それを行うためには相手国(ここでは「韓国」)が公共の安全と秩序を維持しており(つまり戦争状態にないこと)、また、相手国の同意があり、さらには、相手国の関連当局との連携が見込まれるという「3条件」がつけられているのだ。当然、これらの厳しい要件をクリアできず、実際には、自衛隊邦人救出に行けないのである。

 なぜそんな足枷(あしかせ)がつけられたのか。それは、助けを待つ国民を救出に行くという「究極の自衛」が「憲法違反になる」という倒錯(とうさく)した法理を説く政治勢力や学者、新聞が、日本では大きな力を持ってきたからである。

 私がこの実態を指摘した本(『日本、遥(はる)かなり』平成27年)を上梓(じょうし)した際、取材に応じてくれた元外務省幹部は、「自国民を救出することを自ら縛っているのは、主要国の中で日本だけです。しかし、ほかの国と同じように、自国民を救出できるような法整備は、また“戦争法案”といわれてしまう。日本は“大きな犠牲”が生まれるまでは、その愚かさに気づかないでしょう」と嘆いた。

 国民の命を蔑(ないがし)ろにした空虚な言論が大手を振った時代は、やがて終わるだろう。それは、同時に「新聞の時代」の終焉(しゅうえん)を告げるものなのではないか、と私は思う。

                       ◇

【プロフィル】門田隆将

 かどた・りゅうしょう 昭和33年高知県出身。中央大法卒。作家・ジャーナリスト。最新刊は、日台同時出版の『汝、ふたつの故国に殉ず』